「身寄りがないから、成年後見制度を利用した方がいいのだろうか」と気になり、調べ始めることがあります。
一人暮らしを続けている時や頼れる親族がいない時には、成年後見制度が必要なのか調べることも多いです。
また、認知症の兆候が出た時には、制度を利用した方がいいのか気になることもあります。
そうした状況では「将来の契約やお金の管理は誰がするのだろう」と不安になりやすいからです。
身寄りがないことだけで成年後見制度が必要というわけではありません。
まず本人が契約内容を理解し、お金や財産について自分で判断できるかを確認します。
成年後見制度は判断能力が十分でなくなった人の財産管理や契約を法律面で支援する制度ですが、身元保証や入院時の付き添いなど生活上のすべてを代行するわけではありません。
本人が今どこまで自分で判断できるかを普段の生活から確認しておくと、成年後見制度について相談する時期を考える材料になります。
身寄りがないだけで成年後見制度が必要になるわけではない

成年後見制度を考える時は、親族がいるかどうかよりも本人の判断能力を先に確認します。
具体的には、契約や財産管理を自分で判断できるかを確認してください。
たとえば、一人暮らしで子どもや兄弟が近くにいなくても、本人が契約書の内容を理解できる状態なら法定後見が必要になるとは言えません。
身寄りがないことだけで判断するものではないからです。
また、お金を管理し、自分の希望を伝えられるかもあわせて確認します。
反対に、認知症などによって契約内容が理解しにくくなった時は、成年後見制度について相談する時期かを考えます。
また、財産をどのように扱うかを本人だけでは決めにくくなっている時も、相談する時期を考える目安になります。
「家族がいないこと」と「本人の判断が難しくなっていること」は、別の問題として考えます。
成年後見制度以外も含めて、身寄りがない時に確認できる支援を知りたい場合は、身寄りのない高齢者の支援制度について確認できるこちらの記事も参考にしてください。
まずは、本人が今どこまで自分で判断できるのか、できていることをリストに書き出してください。
一人で書き出すのが難しい時は、家族や支援者とも一緒に確認します。
作成したリストは、地域包括支援センターや自治体の高齢者福祉窓口へ持参してください。
相談する時は、そのリストを見せながら担当者へ現在の状況を伝えます。
本人が自分で判断できる時
今は一人で生活できていて、契約内容を理解できるなら、まず現在の生活で何に困っているのかを確認します。
お金の管理ができているかもあわせて確認してください。
そのうえで、「身寄りがないという理由だけで、今すぐ制度が必要なのか」を考えます。
「将来、認知症になったらどうしよう」という不安と、現在すでに判断能力が低下している状態は同じではありません。
将来への備えとして任意後見という制度があります。
これは、本人が判断できるうちに、将来判断能力が不十分になった時の支援についてあらかじめ契約しておく方法です。
今すぐ契約する必要はありません。
現在できていることと、将来心配していることを別で考えると、今困っていることなのか、これから先への不安なのかを区別できます。
契約や財産管理の判断が難しくなった時
認知症などによって契約内容を理解することが難しくなってきた時は、「このまま本人だけで手続きを続けられるのか」が気になります。
本人自身で契約や財産について判断することが難しくなってきた時は、成年後見制度について相談するタイミングでもあります。
たとえば、介護や福祉サービスの契約内容が分からなくなっている時です。
ほかにも、必要な支払いを判断できない時や、預貯金をどう使うかを自分で決めにくい時も相談する目安になります。
こうした変化が続いている時は、本人だけで契約や財産について判断し続けられる状態かを考えます。
この時に考えるのは「身寄りがあるか」ではなく、「本人だけで法律上の判断を続けられる状態か」です。
成年後見制度を考えるのは本人の判断が難しくなった時

成年後見制度を考えるかどうかは、診断名だけで決めるものではありません。
本人が何を理解でき、どの手続きを自分で進められるのかを普段の生活から確認してください。
具体的にどの手続きで困っているのかを書き出すと、成年後見制度について相談した方がいい状況なのかを考える材料になります。
家族から見ると少し忘れっぽくなった程度でも、契約や財産管理では本人だけで判断することが難しくなっている場合があります。
反対に認知症と診断されていても、すべての判断ができないとは限りません。
本人の状態と今困っている手続きの内容を、まず一緒に確認してください。
そのうえで、成年後見制度を利用するか考えます。
介護や福祉サービスの契約を一人で進めにくい
介護や福祉サービスを利用する時には、本人が説明を聞いて契約内容を理解する場面があります。
サービスを利用すること自体は理解できても、「この内容で契約していいのか」「この費用でいいのか」というところまで本人だけでは判断しにくくなる時も出てきます。
施設への入所を考える時にも、本人が契約内容を理解し、自分の希望を伝えられるかを確認します。
法律上の契約を本人だけで進めにくくなっている場合には、成年後見制度について相談する理由になります。
ただし、成年後見人は施設での介護を直接行うわけではありません。
お金や財産の管理を一人で続けにくい
成年後見制度で中心となる支援の一つが財産管理です。
預貯金の管理や必要な支払いを、自分だけでは適切に判断しにくくなることがあります。
さらに、本人の財産に関する手続きを一人で進めるのが難しくなる時も出てきます。
たとえば、何にいくら支払ったのか分からなくなることがあります。
また、必要な支払いと不要な支払いの区別が難しくなる時も出てきます。
こうした変化が続くと、「家族が代わりに管理した方がいいのか」「成年後見制度について相談する段階なのか」と迷いやすくなります。
本人だけで財産管理を続けるのが難しくなっているなら、成年後見制度について相談する時期かを考えてください。
ただし、買い物の同行や日常的なお金の出し入れの支援だけであれば、日常生活自立支援事業など福祉的な支援が適していることもあります。
成年後見人ができるのは契約や財産管理の支援

成年後見人は、本人の権利や財産を守るために支援します。
その中でも、本人に必要な契約や財産管理などへ関わることが中心です。
身寄りがない時には、「後見人が付けば生活のことを何でも頼めるのでは」と考えることもあります。
成年後見人の中心になるのは、本人に代わって日常生活を送ることではなく、本人のために必要な法律上の手続きや財産管理に関わることです。
成年後見人等がどこまで対応するのかは、利用している制度や家庭裁判所の審判内容などで変わります。
本人の財産を管理する
成年後見人等は、本人の生活や利益を考えながら預貯金や財産を管理します。
本人に必要な費用を支払ったり、財産に関する手続きを進めたりすることも成年後見人等の役割です。
成年後見制度は、家族の代わりに自由にお金を使える人を決める制度ではありません。
あくまで、本人の財産を本人のために管理することが前提です。
生活や介護に必要な契約を確認する
成年後見人等は、本人の生活に必要な福祉や介護サービスの契約にも関わります。
あわせて、法律上の手続きを進める役割も担います。
手続きを進める前に、本人の意思も確認します。
そのうえで、必要な福祉や介護サービスにつながるよう手続きを進めます。
成年後見人が本人の自宅へ行って掃除をしたり、買い物へ付き添ったりする制度ではありません。
介護そのものを行う役割とは異なります。
生活の中で必要な支援と、成年後見人が担当する法律面の支援は、別で考えます。
成年後見人でも身寄りの代わりをすべて担うわけではない

身寄りがない時に知っておきたいのは、成年後見人がいても家族の役割をすべて任せられるわけではないことです。
病院や介護施設から連絡先や身元保証について聞かれたことをきっかけに、「成年後見人を付ければ解決するのでは」と考えることがあります。
ですが、契約や財産管理と、緊急連絡や現地での付き添いでは必要な支援が違います。
今困っていることを成年後見人へ頼めるのか確認してください。
本人や家族、支援者だけでは対応しきれない時もあります。
そのような時は、ほかにどの支援を頼めるのかも確認してください。
身元保証や付き添いは別に確認する
病院への入院や介護施設への入居では、保証人や緊急連絡先について確認されることがあります。
その場で「成年後見人がいれば保証人の代わりになるのでは」と考える時もあります。
成年後見人がいるからといって、病院や施設が求める現地での対応や日常的な付き添いをすべて担当できるとは限りません。
病院や施設から何を求められているのか、契約への対応なのか緊急連絡なのかを確認してください。
現地での対応まで必要なのかも確認します。
そのうえで、本人や家族、支援者のうち誰が対応するのかを話しておくと、急な連絡があった時にも対応しやすくなります。
入院時に頼れる人がいない時の対応については、身寄りのない高齢者の入院支援について確認できるこちらの記事で詳しく確認できます。
施設への入所で保証人や緊急連絡先に困っている場合は、身寄りのない高齢者の施設入所
のことを記載してるこちらの記事も参考にしてください。
医療の判断や死後の手続きも別で考える
成年後見人がいれば医療機関で本人に代わってすべての医療判断ができると考えることもあります。
医療について本人に代わって判断する話は、財産管理や契約の支援とは別で考える必要があります。
本人が意思を伝えられるうちに、かかりつけの医療機関へ本人の希望を伝えておいてください。
あわせて、家族や支援者とも内容を共有しておくと、いざという時に話を進めやすくなります。
死後の手続きも、成年後見制度を利用していたからといって、すべてを成年後見人に任せられるわけではありません。
死後の連絡や手続きについて心配がある時は、身寄りのない高齢者の死後事務について確認できるこちらの記事で別に確認してください。
申立てを頼める親族がいなくても相談できる

本人の判断能力が低下して成年後見制度が必要だと感じても、「申立てをしてくれる家族がいないなら利用できないのでは」と困ることがあります。
成年後見制度には本人や親族などからの申立てに加え、状況によっては市町村長が申し立てる方法も用意されています。
頼れる親族がいないから成年後見制度を利用できないと決めず、住んでいる自治体へ相談する方法があります。
自治体ごとに相談窓口や支援内容が違うため、地域包括支援センターや高齢者福祉担当窓口で現在の状況を伝えて相談してください。
市町村長申立てという方法がある
一定の条件のもとで、市区町村長が家庭裁判所へ申立てを行う方法があります。
身寄りがなければ自動的に市町村長申立てになるわけではありません。
市町村長申立ては、本人の状況や親族との関係などを確かめたうえで進められます。
そのため、自治体の窓口の担当者へ現在の困りごとを伝えてください。
窓口が分からない時は、地域包括支援センターの担当者へ相談し、適切な窓口につないでもらえます。
成年後見人は家庭裁判所が選任する
法定後見では、家庭裁判所が本人の状況などを踏まえて成年後見人等を選任します。
家族が希望した人が必ず成年後見人に選ばれるわけではなく、状況によっては専門職が選ばれることもあります。
成年後見人等には、行った仕事に応じて報酬が認められる場合があります。
制度を利用するか考える時には、報酬や費用がかかるのかも確認してください。
報酬や費用については、自治体窓口や地域包括支援センター、家庭裁判所などで確認できます。
日常生活自立支援事業と迷った時は本人の判断能力を確認する

お金や手続きに困っている時には、「成年後見制度なのか、それとも別の支援なのか」と迷うことがあります。
候補の一つに日常生活自立支援事業があり、どちらに相談すればいいのか迷う時もあります。
一つの判断材料になるのは、本人が支援内容を理解し、自分で契約できる状態かどうかです。
「お金の管理に困っている」というだけで制度を決めず、本人がどの程度自分で判断できるのかを基準にしてください。
本人が契約内容を理解できる時
本人が支援内容を理解して契約できる状態なら、日常生活自立支援事業を利用できるか確認できます。
日常的なお金の管理や福祉サービスの手続きに困っている時は、窓口となる社会福祉協議会へ相談してください。
成年後見制度との違いを考える時は、「どちらが上か」ではなく、本人の現在の判断能力と困りごとに合っているかを基準にしてください。
詳しい支援内容については、身寄りのない高齢者が利用できる日常生活自立支援事業について確認できるこちらの記事も参考にしてください。
本人だけでは契約や財産管理を判断しにくい時
本人の判断能力が低下し、日常生活自立支援事業を利用するための契約そのものを理解することが難しくなっている時もあります。
その場合は、この事業だけでは対応が難しくなることもあります。
本人の財産について法律上の手続きも必要になっている時は、成年後見制度について相談することも選択肢に入ります。
本人や家族だけでは決めにくい時は、相談先で今の状況を伝えながら、どの制度が合うのかを一緒に考えてください。
相談先として、地域包括支援センターや自治体があります。
また、社会福祉協議会へ相談することもできます。
2026年の成年後見制度改正は成立済みだが現在はまだ施行前

成年後見制度について調べていると、2026年の制度見直しについて目にして、「今はどの制度について相談すればいいのか」と迷うことがあります。
2026年6月17日に成年後見制度などを見直す改正法が成立しました。
その後、同年6月24日に公布されました。
改正では、現在の後見と保佐を廃止する内容が盛り込まれています。
そのうえで、補助の制度へ一元化する内容になっています。
ただし、2026年9月4日時点では成年後見制度に関する改正部分はまだ施行されていないため、現在制度の利用を考える時は現行制度の内容を確認します。
実際に利用を考える時は、家庭裁判所や法務省などがその時点で案内している内容を確認してください。
現在は後見・保佐・補助の3つで確認する
2026年9月4日現在の法定後見制度は、本人の判断能力に応じて3つに分かれています。
具体的には、後見、保佐、補助の3区分です。
後見は、判断能力が欠けているのが通常の状態の方を対象とします。
保佐は判断能力が著しく不十分な状態、補助は判断能力が不十分な状態を対象とします。
どの区分に当てはまるかは家庭裁判所で判断されます。
改正後の制度は施行時期を確認する
改正法が成立したからといって施行済みとは限りません。
成年後見制度の改正部分は政令で施行日が定められるため、申立てを考える際には最新の施行情報を確認してください。
身寄りの有無より本人が何を判断できるか確認する

身寄りのない高齢者が成年後見制度を考える時は、まず本人が今どこまで自分で判断できるかを確認します。
「家族がいないから必要」と決めるものではありません。
本人が契約内容を理解できるか、お金や財産を自分で管理できるかを確認してください。
あわせて、どの手続きから一人で判断することが難しくなっているのかも確認します。
本人ができることと難しくなっていることを確認したうえで、今困っていることに成年後見制度が合うのか、それとも別の支援が必要なのかを考えてください。
身元保証や病院への付き添い、緊急連絡については、成年後見制度とは分けて確認します。
日常生活の支援や死後の手続きについても、ほかの支援が必要か確認してください。
迷った時は、本人ができていることと難しくなっていることを書き出してください。
その内容を持って自治体や地域包括支援センターなどへ相談すると、状況を伝えやすくなります。
身寄りのない高齢者が成年後見制度を考える時に使える確認シートをプレゼント

ここまで読んでも、「自分の場合は成年後見制度なのか、それとも別の支援を考えた方がいいのか」と迷うこともあります。
そんな時に使える「成年後見制度を相談する前の本人状況確認シート」を用意しました。
制度の申立てに使う専門書類ではなく、本人が今できていることと、一人では判断しにくくなっていることを書き出すためのシートです。
シートには、お金や預貯金の管理状況を記入できる欄があります。
さらに、契約内容を理解して意思を伝えられるかも書き込めます。
今困っている手続きや成年後見制度で確認したいことを記入する欄も用意しています。
身元保証や入院対応など別に確認する事項と、現在頼れる家族や支援者を書ける欄もあります。
自治体や地域包括支援センターへ相談する時に状況を伝える資料として使えます。
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身寄りのない高齢者が成年後見制度を考える時に、本人の状態を書き出したり、家族や支援者と話したりするために使える内容です。
